2007年4月6日金曜日

有名役員の説得

転職というのは「新しい会社を見つける作業」だと思われている方が多いが、「見つけること」よりも「辞めること」の方が難しいケースが少なからずある。内 定が出るまで2週間、辞めることを認めて貰うのに3か月…、となればどれだけ退職交渉が困難で労力を必要とする過程かわかるだろう。

大手メーカーA社のエンジニア:Tさん(34歳)の内定はあっという間の出来事だった。
4社の面接を受けたところ、そのうちの2社が目の色を変えて彼を採りにいった。Tさんは内定が決まると、すぐに「大学時代の友人が多くいるので」と、B社を転職先に決めた。しかし、長い鬪いはそこから始まったのだ。

TさんがA社との退職交渉で最初に向き合ったのは、「無視」であった。上司に退職の意向を伝えても、本気にしてもらえない。
「そんなことを言う前に、やることがあるだろう」
仕事に一段落をつけていくと「次はこの仕事だ」。
Tさんが「時間をとって、話をさせて欲しい」と頼んでも、「仕事がある」「出張が…」「会議が」「子供が病気で」と逃げ回られた。しかたなく、Tさんは同僚の前で「私の退職の件についてですが…」と、大声を張り上げなければならなかった。

次に来たのは「時間稼ぎ」である。
「まさか、本気で辞めると言っているとは思わなかった」と、うそぶいた上司は「取りあえず、人事と上に話をするから待っていてくれ」と言う。しか し、反応はいつになっても戻ってこない。毎日、「どうなっていますか?」とたずねても、「まだ何も回答がない」「常務は忙しい人だから」「報告書はあげて いる。もう少し待て」といった引き延ばしのコメントばかりだった。
結局、Tさんが人事に直談判にいったのだが、その時はすでに退職交渉をはじめて一か月近くが経っていた。

ここからが本番である。説得はTさんの予想を超えて徹底的だった。
人事は「何が不満なのか」をしつこく聞き出そうとする。Tさんが根負けして思っていたことを口にすると、「善処できることがほとんどだ」と、すぐにいくつかの提案をTさんに示した。
昇進、希望部署への異動、配置換え…。さらに人事は「本当は見せることが出来ないのだが」と前置きしつつ、Tさんの入社以来の人事査定を出し「これだけ評価されているのだから前途洋々だ。どうして辞めてしまうのか?」と、Tさんに詰め寄った。

感情面に訴える説得も次から次だった。同期入社・大学時代の先輩・入社時の教育担当・上司、アシスタントから共同開発プロジェクトで共に働いた他社の人間まで連れてきて、Tさんに「残って欲しい」「また一緒に仕事をしよう」と訴えてきた。

転職に向けて、Tさんの意志は堅いものだったと思われる。大企業からの転職では、入社の意志を示すのにもためらいがあるものだが、Tさんはすぐに結論を出すことができた。最初の相談に来たときも、我々は彼の迷う姿を見ることはなかった。
しかし、「君を評価している」と言われて嬉しくない人はいない。大企業で強く慰留を受ければ、グラつくものである。日数が経って、転職活動当初の 「熱気」が失われている面もあったろう。入社を待っていたB社は危機感から、たびたびTさんを会社に呼んで、話し合いをする機会をもったが、内定から二か 月目に入り、我々の感触では「転職は五分五分」というところまで変化していた。

それが、ある日を境に一方に傾くことになる。
Tさんは、A社で技術畑出身の、ある役員D氏の説得を受けたのだ。D氏はいくつかのヒット商品を開発した人物で、Tさんはそれまで直接話をしたことはなかったが、(伝説的なものを含め)噂はいろいろ耳にしていた。A社にとっては、D氏は切り札といってよかったのだが…。

その日の夜、Tさんは我々に「必ずB社に行きます」と電話で言った。D氏との面会でそれを決断したのだ。
「尊大で傲慢でした」
Tさんはそう切り捨てた。
「昔、どれだけスゴイことをしたか知らないけれど、あんな人の下で働きたくはない。『君も僕のようになれるよ』って言われたけれど、あんな人間にはなりたくない」

たしかにTさんには職人気質なところがあり、能弁で多彩、執筆・大学での講演・政府系機関の委員といろいろな仕事をこなしているD氏とはかなりタ イプが違う。しかし、社長以下さまざまなB社の人の説得にも関わらず、あれだけA社に残りそうな気配だったTさんが、いっぺんに決意を固めてしまうと は…。
D氏はいったいどれだけ「嫌味な説得」をしたのだろう? Tさんはそれ以上を語らなかったが、気になって仕方がない我々なのであった。

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