---GoogleはLinuxカーネルを自社のサービスのために改造して使用しているのでしょうか。
手を入れてはいますが,それほど大きな変更ではありません。
Googleでは,1台のサーバー内のリソースのサービスへの割り当てを管理するためにカーネルにちょっとした改造を行っています。1台のサーバーのメ モリーを最大64に分割しています。コンテナライゼーションと呼ぶ方式ですが,これには,Linuxカーネルが備えているNUMA(Non- Uniform Memory Access)アーキテクチャ対応機能を利用しています(編注:NUMAは,大規模並列マシン向けのアーキテクチャで,CPUとメモリーを持つ複数のノー ドで構成されるが,全てのノードが同じメモリー空間を共有する)。
つまり,Linuxカーネルに対し,普通の1台のサーバーを,あたかも多くのノードからなるNUMAアーキテクチャ・マシンであるかのように見せ かけます。これにより1台のサーバーのメモリーを複数の区画に分け,それぞれを別々のサービスに割り当てることで,サービスへのコンピュータリソースの配 分を管理しているのです。
といっても,ちょっとしたトリック(cheat)でNUMAに見せかけているだけで,大がかりな変更というわけではありません。
---他に改造しているところは。
その他には....カーネルに大きく手を入れているところはありませんね。
仕事の90%はLinuxカーネル・メンテナ,10%はGoogle
---Linuxカーネルのメンテナとしての仕事と,Googleのための仕事には,それぞれ何%の時間をあてていますか。
90%はLinuxカーネルのパブリックな仕事にあてています。10%はGoogleの仕事にあてています。
---なぜGoogleはあなたを招いたのでしょう。
---なぜGoogleはあなたを招いたのでしょう。
私も知りたいですね(笑)。
理由は,私が他のエンジニアに力を貸すことができるからではないかと思います。
例えばパフォーマンスの問題で悩んでいるアプリケーション・エンジニアに対してカーネルをもっと有効に利用する方法を助言したり。カーネルの問題に悩ん でいるエンジニアに対しては,問題を突き止めるための方法をサジェストしたり。「ああ,その問題ならもう修正したよ」といったこともあります(笑)。
---あなたはThe Linux Foundation(旧OSDL)のフェローでしたが,Googleに移籍したことでThe Linux Foundationとの関係は変わったのでしょうか。
大きくは変わっていません。
Googleの前には,私は元々,Diegoという小さな会社に所属しながらOSDLのフェローとなっていました。Googleに移っても,The Linux Foundationのイベントやワーキンググループに参加しています。
Googleにとってオープンソースとは何か
---Googleにとってオープンソースとは何でしょう。
オープンソース・ソフトウエアはGoogleのビジネスにとって極めて重要な存在です。Googleのビジネスは,オープンソース・ソフトウエアに負っている。
それゆえに,Googleがオープンソース・ソフトウエアを改善しようとしている,そう強く感じます。実際に,オープンソースを支援するために様々なことを行い,多くの資金を投じている(関連記事)。そのことに対して敬意を払っています。
---「Googleに移ったらMicrosoft Officeドキュメントを見なくてすむようになった」とおっしゃっていましたね。
多くの企業ではMicrosoftのソフトウエアを使っており,Linuxデスクトップはマイノリティです。Googleではオープンスタンダードを使用している。プロプライエタリ・ソフトウエアを使わない。嬉しいことです。
全てがWebブラウザになるとは思わない
---Googleは,IBM,Microsoftに続くIT産業の第3世代の代表と言われます。
全てがWebブラウザに移行してしまうとは思いません。マシンの性能は向上しており,クライアント・アプリケーションは機能,パフォーマンスで Webブラウザ上のアプリケーションを上回ります。もちろんカレンダーなど,Webで他のユーザーと共有したりすることで便利になるアプリケーションもた くさんある。目的に合わせて使い分けるハイブリッドな形態が最適だと思います。
---メール・クライアントは何をお使いですか。
Sylpheedを使っています。