Mさんが入社後数年して、会社の業績は悪化してきました。Mさんの時代には積極的に行っていた新卒採用も、ここ2、3年は1人も入ってこなくなりました。若手が行う作業をする人がいないため、結局Mさんがその作業を行っています。
将来は上流工程にチャレンジできると思っていましたが、会社の業績が悪くなるのと比例するかのように受注プロジェクトが少なくなったせいか、まだまだ上の社員がつかえており、上流工程にチャレンジできそうにありません。
このままでは、将来に不安があると考えて転職を検討するようになり、人材紹介会社にも登録したのです。
■あのとき転職活動を始めていれば……
Mさんが弊社に転職相談に訪れたのは、数年前の不況期でした。現在に比べると求人数も少なく、特に汎用機系の求人はほとんどない状況でした。
M さんに対してキャリアカウンセリングをしていて感じたのは、おっとりしすぎている、というものでした。残業時間については、在籍している企業が平均よりか なり少ない残業時間であったため、一般的な残業時間と思われる企業をご紹介しても、躊躇(ちゅうちょ)してしまうところがありました。
さらに問題があると思われたのが、リーダー経験・後輩を育てた経験の少なさです。Mさんがご相談に訪れたときは20代の後半。そろそろリーダー経験が評価 の対象にされ、それが転職の合否にかかわるような年齢です。しかし後輩が入社してこなかったため、Mさんはリーダーといわれても仕事のイメージができない ほどの状況でした。
Mさんのスキル・志向に合う企業は見つかりませんでした。Mさんに状況をお伝えしたとき、「今後、自分の仕事・年収はあまり上昇しないかもしれませんが、たぶん雇用は保証されるはず……。ですのでいまの会社に残ります」とのことでした。
もし、Mさんが前述した初めに転職を考えたタイミングで転職していれば、今回のタイミングが2度目の転職だとしても、年収アップの転職ができたかもしれません。