同点打を放った中村紀があふれる喜びを隠そうとせず、二塁上で何度も手をたたいた。1点を追う8回2死二塁。真ん中高めに入った変化球を、得意の右打 ち。右中間を破った。割れんばかりの拍手で迎えたナゴヤドームのファンの期待に応え、その後の立浪の勝ち越し打を呼び込んだ。
契約交渉がこじれてオリックスを自由契約となり、かつての2冠王がテストの末、育成枠で中日に入団。必死の思いでオープン戦に臨み23日に支配下選手登録 された。16年目の中村紀が、前夜は「眠れずに素振りをしていた」という。単身で滞在するホテルに駆けつけた家族には「開幕を普通に迎えることが、こんな にすごいことなんて」ともらしていた。
2打席目までは二ゴロと二飛。だが6回に高めのボール球を強引に中前打。思わずほっとした笑みがこ ぼれ、緊張感がほぐれたのか8回の殊勲打につながった。「勝ちたい。勝つしかないと思っていた。最高ですね」。リーグ連覇を目指すチームに、恩返しがした いという気持ちで臨んだ中村紀が、開幕戦で逆転勝ちをもたらした。