いつしか説教マシンガンと化していた。ああ、黙っていれば今ごろは海外駐在妻のポジションに居たかもしれないのに……。
「どうしてもスイッチが入っちゃうんですよ。私のアイデンティティーとでも言うんでしょうか、仕事話は中途半端に収められないんです」
それなら最初からしなければいいのにと思うだろうが、そうはいかない女性たちが増殖しているようなのだ。キャリア官僚のB子さん(28)も、合コンで、
「仕事で日本の製造業を見直すためのデータなどを集めているんだけど、やっぱり日本の高度経済を支えたのは、ものづくりであって(云々かんぬん)――」
どんどんヒートアップ、身ぶり手ぶり、テーブルを叩きながら仕事話を気持ちよく弁じていた。と、男性が一言。
「熱く語りすぎ。もういいから」
仕方なく、どこのイタリアンがおいしいとか、オープンした洋服屋の評判とかへ話題はシフト。なにか満ち足りない。
「そういう話は雑誌やテレビで仕入れればいいでしょ、と言いたい。もっと思いや考えをぶつけ合える話がしたいから、仕事の話をしたのに……。飲み代5000円も払って上っ面の話だけだったら時間とお金のムダでしょ」
だけど、仕事話で気持ちはよくなっても2人の間は進展しないのでは?
金融関係で働くC子さん(32)は3歳年下の起業家と半年以上、友達以上恋人未満の関係が続いている。どうもいま一歩進まない。
顧客とのやりとりや部下との関係などで常に気をもむ仕事に携わるC子さんは、そういう悩みを聞いてアドバイスをくれる人がタイプ。起業家の男性も話をよく聞いてくれるし、「どうしたらいいかな」と聞けば、「僕だったら……」と意見をくれる。
話は尽きず、C子さんの部屋で仕事を語り合いながら早朝を迎えることも何回かあった。だが、恋人に発展する気配は全くない。同じ部屋に別々に寝て、すがすがしく帰っていくのだという。
「やっぱり仕事話が悪いんでしょうか? 私の方は、彼にその気があるのなら、そろそろ恋人として付き合ってもいいかな、と思うのですが……」