人間関係に疲れ、社会との関係を絶ちたいからホームレスとなった人はもちろんいるが、多くの人はホームレス同士で助け合い、基本的に物々交換などで融通しあっている。
物々交換だけでなく、「サービス」と「モノ」の交換も行われている。元理容師の男性は、ホームレス仲間の髪を切ることで、食べ物から、酒、たばこまで、生 きていくのに困らない物資を得ている。また、元すし職人だったホームレスは、高級すし店の裏で拾ったネタの「くず」を拾い、握り直してたばこなどと交換す る。
食べきれないほどの廃棄食品が手に入った場合は、必ず仲間に分ける。持っていても腐るだけだし、貸しをつくっておけば次は自分がもらえるからだ。
いつどこで仕事があるか、炊き出しはどこに行けばいいかといった情報もホームレス仲間と親しくしていれば得ることができる。
しかし、同じ地域にいるホームレスとの付き合いがうまく行かなければ、その地でホームレスを続けていくことは難しい。うまく溶け込めたとしても、自分の本名を明かすことはほとんどといっていいほどなく、仮名で通す人が多い。仲間にもあまり自分の過去を語りたがらない。
以上、衣食住を基本に、現在のホームレスがどのような生活を送っているか、私の実感をもとに書いてみた。おそらく、これまでみなさんが持っていたホームレスのイメージとはかなり違うものではなかっただろうかと思う。
こうした話は、私が何度も彼らの元へ足を運んで、取材という気持ちではなく、世話好きから出た好奇心で世間話をする中から、ポロッと出てきた話ばかりである。彼らは、本当は話をしたがっているし、誰かに話を聞いてもらいたいと思っている。