さいたま桜高等学園は旧県立衛生短大の校舎を改築して造られた。真新しい校舎には農園芸、フードデザイン、木工、福祉、服飾などを学べる四学科が あり、百十人が通う。ペットボトルのリサイクル機械、パン調理室、農園芸の温室などの本格的設備が整い、従来の「養護学校」のイメージとは程遠い。
週三十一時間ある授業の半分は専門教科の実習。メンテナンスコースがある環境・サービス科の授業では、ビル清掃会社に長年勤務する加藤光雄さん(65)が 講師となり、モップの使い方を教える。「洗うときは足をモップにかけてね。そうそう、二つに分けて絞って」と手取り足取りの指導が続く。生徒も講師の実技 を見ようと「見えない」「どうやってやるの」と真剣そのもの。
同校ではビル清掃だけでなくパン製造の職人や介護福祉士ら七人の社会人が非常勤講師となっている。また、教諭二人がビル清掃会社やベーカリーで研修をするなど、実践的な実習を心掛けている。
生徒全員が就職するには、企業側の理解も大切なポイント。同校では教諭五人を「就労支援部」に配置し、実習や雇用の受け入れ企業を開拓する。一年生は九月以降、二週間~二カ月程度の企業内実習を行う。特に三年生の場合、就職に結びつくまで繰り返し企業で実習させる方針。
就労支援担当の三原和弘教諭は「厳しい面もあるが、企業に『生徒はこんなことができる』と提案して理解を得たい。生徒も実体験を積むことで就労のイメージ を持ってほしい」と話す。教諭五人で求人チラシや公的施設からの情報提供を基に企業回りをしており、今のところスーパー、製造業、リサイクル施設など約五 十社が実習受け入れを承諾しているという。
生産技術科一年で、菓子パン作りの授業を受けた狩野桃子さん(15)は「高校に入って友達がたくさんできた。将来はケーキ屋さんになりたい」と夢を膨らませていた。