政府・与党が13日に了承した公務員制度改革は、“官の大国”である北海道の官公庁の天下りにも大きな影響を与えるのは必至だ。身内同士で守ってきた天下り特権に政治主導によるメスが入ることになり、国土交通省の出先機関である開発局や道庁には危機感が広がっている。
「再就職制度の見直しは、役所の秩序、文化を崩壊させることにつながる」。国土交通省幹部は十三日、既得権益だった退職者の天下り人事が新人材バンクに一元管理されることに不快感を示した。
旧北海道開発庁の流れをくむ国交省北海道局と開発局は、旧開発庁、農林水産省、国土交通省、財務省採用の官僚や技官の混合所帯になっている。退職する時は出身官庁が面倒を見るのが慣習だ。
旧開発庁組で昨年夏に国交省北海道局長で退職した吉田義一氏は、今春から北海道河川防災研究センター理事長に就任した。前理事長は元開発局長の平野道夫氏で、退任に伴って道内のコンサルタント会社に移った。
開発局では毎年度、約二百人の職員が退職し、人事課が調整窓口になり、特殊法人や民間企業に再就職している。歴代の開発局長経験者など大物OBは北海道河川防災研究センターなどの特殊法人に役員として天下りするケースが多い。
政府・与党が合意した再就職あっせんの新人材バンクへ一元化されれば、開発局が握ってきた天下りポストを国交省や農水省などを退職した幹部に横取りされ るケースも想定される。このため、新人材バンクの制度設計が「今の開発局では一番の関心事」(開発局職員)になっている。
天下り規制は地方公務員も対象になる。菅義偉総務相は十三日の記者会見で、地方公務員法改正案を今国会に提出する方針を表明。退職者による出身部局への口利き禁止が軸になる。
道は独自に二○○○年から再就職要綱を設け、出身部局と関連のある企業への再就職二年間自粛を定めているが、罰則規定を伴わない紳士協定だ。道幹部は「表向きは要綱を守っていることになっているが、実態は異なる」と打ち明ける。
総務省は、自治体が個別に設ける内規では、実効性が伴わないとして、法律改正に踏み切る。昨年は、福島、和歌山、宮崎各県で県発注工事をめぐる談合事件が続発しており、「退職後も含めて、地方公務員の規律を厳格にしたい」(幹部)としている。