国家公務員の再就職規制問題について、政府と与党が基本合意した。国家公務員法改正案には見直し規定を置くことになった。
安倍首相は、内閣府に設置する新・人材バンクが再就職を一元的に管理することで、各省の予算や権限を背景とした押しつけ的な再就職あっせんを根絶する、と繰り返してきた。
天下りが談合や汚職などの不祥事を生む要因になった面は否定出来ない。だが一握りの例外だ。国家公務員のほとんどは、義務感と使命感をもって、国の発展と国民生活の向上に尽くしてきた。
経済・社会が大きく変化し、国際競争も激化する中で、大事なのは、これからの国家公務員のあるべき姿と仕組みを示すことだ。再就職問題も、その中で考えていくべきことではないか。
その点で疑問なのは、新・人材バンク以前になすべき課題に真剣に取り組む姿勢が乏しいことだ。
幹部職員となる1種試験採用者は、最後に次官になる一人を除き、50歳前後から順次、退職勧奨を受けて、企業などに天下っていく。
これを改めるには、退職勧奨年齢を引き上げたり、専門スタッフ職を作って次官、局長になれなくても公務員として残れるようにしたりすればよい。高齢化の時代に、定年延長も進めるべきだ。
いずれも、以前から提起されているが、政府の取り組みは鈍かった。退職勧奨年齢の引き上げも、2002年から05年までの3年間で、平均55・8歳まで、わずかに1・4歳上がった程度だ。
ところが、今回の制度改革では、新・人材バンクと能力・実績主義が先行し、専門スタッフ職創設、公募制導入、定年延長など、天下りの抜本是正策ともなる措置は後回しになる。
再就職規制は本来、こうした措置と一体として考えるべき問題だ。渡辺喜美行政改革相は、「パッケージ論は改革の先送り」と言うが、これこそ、天下り抜本是正策の先送りではないか。
これで、本当に機能する新・人材バンクができるかどうか、極めて疑問だ。
渡辺行革相らの言動には、公務員叩(たた)きで政権浮揚を図る意図も見え隠れする。そうであれば、大衆迎合そのものだ。
新・人材バンクは、08年中に設置し、設置後3年以内に再就職あっせんを一元化するという。見直し規定に基づいて、新・人材バンク構想を根本から見直すこともためらうべきではない。