2011年春に開業するJR博多駅ビルに阪急百貨店が進出し、競争が激化するのを視野に、博多大丸(福岡市)は今春から、3年がかりで店舗の全面 改装に乗り出した。9月には親会社の大丸が松坂屋ホールディングスと経営統合し、業界首位の百貨店グループの一員となる。経営環境が大きく変化する中、今 後の取り組みなどを森川善博社長に聞いた。
――婦人靴売り場を最初に改装した。売れ行きは。
「前年と比べ3~4月は平均20%増えた。改装では、陳列する商品数を減らし、在庫を増やした。並べる商品が多ければ売れる訳ではない。物があふ れている時代に、ターゲットを明確にする必要がある。商品を見やすく、買いやすく、楽しい売り場にしたことが今の顧客の消費行動にマッチした。今後の改装 でも顧客の価値観をとらえる努力をしたい」
――松坂屋との統合効果は。
「人材交流が活発になる。商品開発も幅広くなり、新しいブランドも増える。競争に勝つ魅力ある企業になれば、優秀な人材も集まる。来春の入社希望者も2倍近く増えているようだ」
――小売業界ではパートを正社員化する動きがある。
「制度はあったが、ほとんど使われなかった。今年から積極的に活用したい。将来のリーダーを育てるには、現在の正社員だけでは賄えない。労働意欲を高め、長く働いてもらうためにも優秀なパート社員を採用していきたい」
――大型連休の出だしは。
「非常に厳しい。特に女性用の衣料品は全世代で悪い。消費行動の多様化もあるが、景気は回復しても、地方では個人消費までは回復していないようだ」
博多大丸にとって、近隣の岩田屋、三越福岡店に加え、2011年春までに福岡市に進出する阪急百貨店や生活雑貨の東急ハンズ、ロフトは強力なライ バルとなる。少子高齢化で市場の大きな伸びが期待できない中、顧客のニーズを的確にとらえ、どのように全面改装して生まれ変わるのか注目される。