ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)という手もある。国際電話のオペレーターをする谷岡典子さん(31)は昨年11月、ミクシィの日記につづった。
「1人でも入れる労働組合に入って運動してます。組合を作ると、会社と対等な立場で話し合えるんです」
谷岡さんはKDDI子会社の契約社員。会社は昨夏、契約社員の労働条件の変更を一方的に通知してきた。(1)交通費の支給を廃止(2)1年契約は3カ月・6カ月の短期更新に(3)深夜勤手当2000円を400円に減額、などだ。谷岡さんは月収6万円のダウンになる。
「契約途中で一方的に条件を変えるのはおかしい」
上司との面談で訴えたが取り合ってもらえない。条件を応諾するかどうか返事を迫られた2回目の面談を控え、ネットで見つけた派遣ユニオンに電話した。書記長の関根秀一郎さんは穏やかに言った。
「全部ノーって言いなさい」
会社と闘うのは怖かった。クビになるかもしれない。
「でも、転職してもまた非正社員。ここで逃げても、同じ問題が繰り返されるだろう」
夫も姉も友人も、有期雇用の社員。将来子どもも欲しい。そのころには、非正社員もまともな働き方ができる社会になっていてほしい。腹をくくった。
ユニオンに加盟し、関根さんと2人で数回の団交に臨んだ。約2カ月、同僚にも言わず、たった一人の闘い。数回の交渉の後、会社が譲歩する姿勢を見せ始め、10月からの各種手当の減額が保留になった。
すると、職場の同僚が谷岡さんに「労基署が踏み込んだらしい」とささやいた。がっかりした。
「団交の成果だって知らないのか……。この仕組みを知らないとまた同じことされちゃうよ」
そこでミクシィで「告白」し、同じ内容を職場の友だちの携帯に「転送歓迎」でメールした。
数日後。昼勤務の40代の先輩が、夜勤で入る谷岡さんとすれ違いざまに声をかけてきた。
「メール見ました。協力します」
別の同僚は小さくたたんだ紙切れをくれた。「すき家のアルバイトが労組結成」を報じた新聞記事のコピー。
背中を押され、谷岡さんは動き出した。